(書評)中古ワンルームは東京23区を買いなさい 重吉勉

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2017年10月18日

(書評)中古ワンルームは東京23区を買いなさい 重吉勉

こんばんは、ワンルーム大好き、ワンルーム滝川@マネテク!です。

どこで見かけたのか忘れてしまったのですが、中古ワンルームマンションの投資で有名な「日本財宅」という会社のことを知り、興味を持ちました。

中古ワンルーム投資に特化


社長である重吉勉さんは何冊か本を出していて以前本屋で東京の中古ワンルームを3戸持ちなさいという本を立ち読みしたこともあったのですが、その時はあまり興味を持てませんでした。
ちなみにその後、読んで書評記事を書いています。

(過去記事)
・(書評)東京の中古ワンルームを3戸持ちなさい 重吉勉 | ブックスたきがわ

その後も不動産投資自体には興味があり、何冊も本を読んで勉強したりはしているのですが、最近、日本財託が主張する「東京の中古ワンルーム投資」に興味を持つようになり、図書館でこの本を借りてみた次第です。

リスクを数値化している


この本の良い点はマンション経営のリスクを数値化するという明確な方針を掲げている点です。
この手の本でよくありがちなのは、得られる収入面の数字だけを具体化して実際に発生し得る潜在的なリスクについて数値化されないままに話が進んでいき、結局不動産投資を勧めるというストーリーです。
一方で、この本では実際にどういったリスクがありそのリスクをどのように計算するべきかというところをきちんと説明しています。
その点は非常に好感を持ちました。

例によって、気になった点をメモしておきたいと思います。

マンション経営の3大リスク


まず、マンション経営の将来の収益に影響与える3大リスクとして挙げられているのは以下の3つです。

・家賃下落リスク
・空室リスク
・修繕積立金上昇リスク

家賃下落リスク


当然ながら、新築時の家賃で永遠に貸し続けられるわけではありません。
老朽化による家賃の下落には築年の経過による緩やかな家賃下落という側面と、設備面がトレンドから外れたことにより大きく家賃が下落する側面と2つの要因があります。
したがって、シミュレーションの前提条件として家賃は下落するということを織り込む必要があります。
具体的には、この本では家賃は毎年1%ずつ下落すると仮定し、3年に1度設定した入居者の入れ替わりのタイミングで3%の家賃下落を反映させています。

一方で家賃下落にも必ず底がある、というのも事実で、築40年50年と経過したとしても家賃がゼロになることはありません。
日本財託のデータでは大体17年位で下げ止まるようですが、この本では30年目まで下がり続けるという、ある意味堅めの前提でシミレーションをしています。

空室リスク


日本の人口減少社会は既に始まっていて、この本で投資のターゲットとしている東京でも人口減少が始まっています。
東京都の人口は2020年にピークを迎えて、それ以降は徐々に減っていくという予測がされています。

これを踏まえてシミレーションの前提条件として空室リスクが増大するとしています。
具体的には、この本では3年ごとに空室になるリスクを織り込んでいて、購入から1年目から10年目までは34日、11年目以降は60日の空室期間を想定しています。

なお、一方で東京のワンルームマンションに関する好材料もあります。
例えば国策で留学生を増やしていることや、大学の都心回帰現象が加速していること、経済機能の集中がさらに加速していることなどです。

また、東京の新築ワンルームマンション供給には、いわゆるワンルームマンション開発規制条例によってブレーキがかかっているという現状があります。
したがって、追加の供給が制限されているので、中古のワンルームマンションに対する需要はあまり減少しない可能性があります。

修繕積立金上昇リスク


修繕積立金は大規模修繕等のために毎月積み立てているお金ですが、実際には建築当初は低く設定されていて10年後20年後などに引き上げがされるということがほとんどです。

したがって、シミュレーションの前提条件として修繕積立金は上昇するとしています。
具体的には1年目から10年目までは据え置き、11年目以降は当初の金額の2倍、21年目以降は同社の金額の4倍と想定しています。

その他考慮すべき諸費用


これらのリスクを考慮して収支をシミュレーションしていくのですが、ここまでに出てきていない毎月の支出として、管理費と管理代行費があります。
管理費は建物管理外車に支払うもので、管理代行費は入居者の募集やリフォームの手配等、入居者に関わる業務を代行してもらう費用です。

それから毎年の支出として固定資産税、それから所得税も考慮する必要があります。
さらに臨時の資質として内装日(原状回復費用として敷金で賄えない持ち出しが5万円)と設備交換費用(エアコンと給湯器で15年毎に20万円)があります。

この本にすればこういったリスク計算をした上で行ったシミレーションで導き出される平均手取り利回りは30年で3.83%、20年で4.23%、10年間では4.72%となるようです。

借り入れの費用


後はここまでに出てきていないのが、借り入れに伴う費用です。
この部分についてもきちんとシミレーションがされています。

金利を3%として、仮に頭金5%でローン組んだ場合10年目までは家賃による収入が支出を上回るのでトータルでもプラスになります
ただし11年目以降は家賃が下落することと終電積立金が上昇することで毎月の収支は赤字となります。

そして、毎月の収支が10年目以降も赤字にならないようにするためにはどうすればいいかという点なのですが頭金を増やすことで住宅ローンの支払いを減らしトータルでも黒字にすることができます。
具体的には頭金を30%入れることでローンの完済まで一度も累計収支額がマイナスになることなく運用することができる計算になります。

金利上昇リスク


さらに金利上昇リスクについても触れられています。
金利が上昇すると一気に収支が赤字に転落するうえに、金利上昇リスクの回避は繰り上げ返済くらいしかないので、今の経済環境ではなかなか金利は上がらないようには思うものの非常に危険だと感じました。

冷静に計算して見えてくること


一通り読んだ上での感想ですが、これだけのリスクを受け入れて、利回りが3%−借入金利、というのはなかなか厳しいと感じました。
私のここ10年のインデックス投資利回りは、手数料等控除後で6.49%/年相当です。
そう考えると、いくらレバレッジが効くからと言って、不動産投資をするよりもインデックス投資でコツコツ機械的に余剰資金を運用していくのがよいように思いました。
逆説的ではありますが、そういったことに気づかせてくれたという意味では良書だと思います。
中古ワンルーム投資に興味がある方は、一度読んでみるとよいかもしれません。

中古ワンルームは「東京23区」を買いなさい
★★
星の基準
★★★★★ 手元に置いて何度も読み返したい名著 買って配りたい
★★★★ また読みたい、いい本。他人に勧めたい
★★★ よい本だった。また読むかは微妙。
★★ 読む価値のある部分もあるが…。また読むことはなさそう。
★ 時間の無駄だった。

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by ジョージ滝川 at 06:37 │ Comments(0) 読書  
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